久美さんの行く先をあれ此れと心配し、又今度起った根拠のありそうな噂のためにお久美さんの心が乱される事を案じて居た。
 八月も末になって居るので、もうじき東京へ帰らなければならないのに、思って居る事の一つもまとまらない所か却って種々お久美さんにとっては厭な事許りが殖えて此れから益々辛い事だらけになって行きそうな有様なので、殆ど神経病みの様になって、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は毎日毎日気を揉んで居た。
 東京からは何とも云って呉れないので、もう十日程の先にせまって来て居る帰京の日を思って※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はやきもきして居ると、思いがけず好い報知を手にする事が出来た。
「※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の家と縁つづきになって居る或る華族の小間使いとして話しをして置いたから来て見てもよい。けれ共人柄や何かは私が五六度会った事もあるしするから大抵は分って居る様なものの責任を持つ事になるから四五日家に居させてからよかったら遣ろう」と云う手紙を受けとったとき※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はど
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