長いものである。
まだ心の育ちかけの漸々赤坊と云う名からついさっきはなれたと云う様な時に「お久美さんは可愛い」と思い込んだのが一種の感情の習慣になって、お久美さんと云えば憎めないもの、可愛いものとなって来て居るのが気味の悪い位種々な時にフイフイと現われて来た。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんを疑い切れなかった。
はたの者がどんなに散々とこなそうともつまりの時にためらわぬ弁護を加える気持を持って居た。
そして、自分とお久美さんの間には何の隔りもなかった――女に有り勝な物質上の遠慮だとか嫉妬だとか云うものは完く姿をかくして居たのである。
女姉妹のない※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は子供の時からまるで年上では有っても妹に対する様な気持をお久美さんに持って居たので、勿論たまには不快に思う事又は激しい感情に動かされて殆ど普通に有り得ない気持になる事はあったとしても、揺がぬ基礎になって居るその感情は二人の永年の間をあきない丁度米の飯の様な味を出させて居た。
と、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、その時も
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