のでは有るまいかと云う危惧が押えられず湧いて居たと云う事は折々其れとなく与えられる注意で※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子も覚って居たけれ共、自分がお久美さんを「仲よし」と云う以上に愛して居るのは事実としても其れが何にも憚かられる事とも亦危ない事とも考えられないので、遠慮もなくすべてを頼んで居た。
 そして、おそかれ早かれ孰れはお久美さんに都合よくなる様な事が見つけられるにきまって居ると云う安心が心の底にあった。
 毎日毎日※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんの行かれそうな家を知人の間に物色して見たり、自分が充分働けて一つ家に同じ様にして暮して居られたらさぞ気持の好い事だろう等と、或る時は非常に実際的に又或る時は此上なく空想的に彼女の身の振り方を案じて居た。
 そんな時にも※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は永年の間に馴らされた心と云うものを考えずには居られなかった。
 少しずつ字と云う物が自分の言葉を表わして呉れるものになってからまだ二三年外立たない年にある自分にとっては、七年と云う時間は殆ど一生と云っても好い位の
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