けれ共、今差しあたってその位の年頃の人の行く様な所も見当らないし又私として直接女中の世話も出来ないのだからと云ってあった。
 家で使うならと云う様な事が有ったので、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は早速、決して家で使う等と云う事は出来ない、私が帰った時呼びずてにして用を云いつける事は到底出来ないのだから、どうぞいそがないでもどっか見つけてあげてくれと、前にもまして丁寧に願ってやった。
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「お久美さんの心配な程私も心配して居りますし、私としては出来る丈の事をしてお久美さんを好く仕てあげなけりゃあならないんでございますもの。
[#ここで字下げ終わり]
と云う様な文句を書きながら、度はずれの様な事許りする自分を母はどう思って一字一字を読んで呉れるだろうと思ったりして居た。
 寛大に自由にして居て呉れる母も自分とお久美さんとの間に対しては或る不安を持って居ない事はないことを※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は知って居た。
 普通の友達以上に親しく離れられない者同志の様にして居ると云う事はよく学者仲間の問題になる病的な心理状態にある
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