うならないと私断言する。
「貴女みたいに苦労のない人はありゃあしないわ、ほんとうに。
貴女ばっかり受け合って呉れたって、伯母さんがそうしたらどうするの。
お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんがそう云いましたなんて云ったって仕様がないじゃあないの、
駄目よ。
[#ここで字下げ終わり]
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は今まで聞いた事のない乾いたガサガサなお久美さんの声を聞いた。
強《こわば》った様な頬付をして病気の様な眼をして居る様子を見ると、その心配にどれ位お久美さんは悩まされて居るかと云う事が思いやられて、自分の力で取り戻しのつかない遠くの方まで走らせて仕舞った様な悔みと不安がじいっと仕て居られない程激しく※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子を苦しめた。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子も又お久美さんを自分の力で如何うもする事は出来ない事だと云う事をかすかながら感じ始めて居た。
非常に淋しかった。
けれ共「それはそうに、とうの昔からきまって居る」と云う気持が一滴の涙もこぼさせなかった。
前へ
次へ
全167ページ中149ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング