は何か取り越し苦労をして居るんじゃあないの。
 私には大抵分っては居るけれど、そりゃあ余り心配の仕すぎじゃあ有りませんか。
「貴女は何も知らないからそんな呑気な事云って居らっしゃるけれど、どうだか分らないじゃあないの。
 彼の人があんな足りない者だから余計私を苦しめる積りでどうかするかもしれないじゃあないの。
「だから、それが思いすぎなのよ。
 貴女に対して感じて居る通りの嫉妬を矢っ張り今度来た人にだって持つに極って居るじゃあありませんか。
 貴女の邪魔をする通りに重三とか云う人の事も取り扱って行くにきまって居るわ。
 重三と云う人にだって一生嫁は取らせない積りで居るんでしょう、きっと。自分が先に死ななくちゃあならないなんて思わずに。
 だから大丈夫よ。
「いいえ、大丈夫だなんて分るもんですか。
 私はきっと彼の人の事だからそうでもするに極って居ると思うわ。
 第一そりゃあ自分で大切がって居るんですもの。
「大切がるなんて……
 そりゃあ只珍らしい内の事丈なんでしょう。
 何にしろ貴女なんか今のままなのだから安心して居らっしゃいよ、ね。
 心配したって仕様がないわ。
 そりゃあきっとそ
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