かましくは云わなかった。
割合に単純な心は、一々確かに云ってからされるより、だまってされて居る方が自分としては堪えられる様でも有った。
会う度毎に※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんの屈託の有るらしい様子に気が付かないではなかったけれ共、若し別にどうと云う事も思っては居ないのに自分の言葉で、
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「ああほんとにそうだ。
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と潜んだ気持まで呼び起す様な事が無いものではないと思って居たので、出来るだけ気を引き立てる様に気を引き立てる様にとはしながら別に立ち入った気持まで聞く様な事は仕ずに居た。
十五
お久美さんは「お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんになんて今の私の心が分るものか、彼の人は呑気なんだもの」と思いながら種々案じて居るらしく気遣って居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の様子を見ると、又何となし頼りの有る縋って居たい様な気にもなったのだけれ共、喉まで出掛って居る最初の一言を云い出す決心が付かないで、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−
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