の人を何か彼にか云っても、私だけはちゃんと彼の人を守って行かれる丈しっかりした考えを持って居ます。
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と云って、祖母に嘲笑われながらそんな事が一度一度と度重なるに連れて、
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「自分丈は正しい理解を持った同情者であり得る。
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と云う考えが深さを加えて行くばかりであった。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんに対しては純な混気のない心が働いて行くのを頼もしく有難い事に思って居た。
 橋本の金の事が有って以来、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は山田の家へ行く事を祖母に云う事が出来なかった。
 一度|等《など》は祖母が止めるのも聞かずに出掛けて行くと、漸々山田の家の垣根まで行くか行かないに男を走らせて、
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「御隠居様が、用事があるから私と一緒にお帰りなさる様にとおっしゃいます。
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と云ってよこさせた。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は余程帰るまいかとも思ったけれど、男に対して祖母の面目を失わせる様では
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