年寄は非常にその熱心らしい調子が気に入って、東京の塩瀬のお菓子と云う因縁付きの取って置きの物まで食べさせたりした。
そしていつでも引き合いにお関とお久美さんが出て、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が居たたまれない程種々有る事ない事、お久美さんの噂にまで話は拡がって行って、来た者の帰った後ではきっと、
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「お前は夢中で贔屓してお居でだけれどね。
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と、目先の利かないと見られて居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が小一時間も山田の一家の事並びにお久美さんの解剖を聞かなければならなかった。
毎日きっと一度は同じ事を聞かされて居たけれど、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はどうしても祖母の言葉を信じる事が出来なかった。
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「彼那お関等のために誤解されて種々下らない事を云われて居なければならないお久美さんを考えればほんとに可哀そうにならずに居られません。
あの位苦労をして辛い思いをして居ながら心の素直な人はあんまり居ないでしょうのにね。
百人の中九十九人、彼
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