ない様な、もう少しどうにか仕ても上げられそうなと考えられたりした。
けれ共、その事を非常に残念に思って居た老人は、少し種々な事を打ち明けて居る者が来ると、
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「此処限りの話なのだがね。
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と断り書きを付けながら、かなり芝居たっぷりに山田の主人の常軌を逸した行動を批難して話して聞かせた。
聞いた者は皆驚きの目を見張りながら、
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「まあそんな事までするんですかなあ。
彼のヤソ爺様なかなか凄腕ですな。
何にしろ尻押が神様と来てるから御隠居さん、なかなかやる事もドシッとした事ですわい。
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と戯談の様に云う者もあれば、
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「そりゃあ御隠居さん、泣寝入りは人が好すぎますよ。出すべき所へ出せばちゃんと此処に理が有るんだから、貴女さえウンとおっしゃれば一肩脱がない者でも有りませんよ。
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と云ったりする者があると、
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「何、もうやったものと思う外ないのさ。
彼れ丈の金で罪人を作るでもないからね。
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とは云いながら
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