っとの友達ならだまされて居られるかも知れないけれど、此那に長い間の事ですもの。
「そこがなお都合が好いのさ。
 長い間だと思ってお前は好い気になって居る。
 二月や一月一緒に居る間位はどんな振りでも仕て居られる者だからね。
 お前がそんなに一生懸命になって云って居る事が今に見ておいで、
 まるで異った事になって来るから。
[#ここで字下げ終わり]
 祖母は平常に無い雄弁で云い立てた。
 けれ共※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は場合が場合だったので格別気にも止めないで聞き流して居た。
 意外に踏み付けた行為をされた憤りを忘れる方便に年寄が此の位その周囲の者を悪く云う位は何でも無い事だし、四五日もすれば又その記憶から薄らいで仕舞うものと思って居た※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、如何してもお久美さんを疑う気にはなれなかった。
 却って、この頃の様に種々の事が起って来て、世の中に馴れて居る様でまごつき易い心がひどく動揺して居るらしい事を想うと気の毒になって、人の勝手な噂さを他場事《よそごと》の様に聞いて居る自分がお久美さんに対して余りに思い遣りの
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