れないだろうじゃあないか。
 お人を好くして居たら三日も立たない内に住む所も無くされて仕舞う。
 ああああ、厭な世の中さ。
 此那世の中に生きて居るより死んだ方がいくら好いか知れやしない。
 長く生きて居れば厭な事を余計見るばっかりだよ。
 お前見たいな世間知らずはよく此那事を覚えて置くものだよ。
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 祖母は気の毒な程歎息をして居た。
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「だけれどね、お祖母様、
 之から金の事なんか頼むのは金にあんまり困らない人になすった方が好い。

 彼那、金と云えば夢にまで見たい程饑えて居る人に頼むなんて、此方も手ぬかりだったんだから、諦めるより仕様が有りませんわ。
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と※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が云っても聞かない祖母は段々山田の家族の事を悪く云い出して、お関の事、お久美さんの事を頭ごなしに仕た。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は赤くなってお久美さんを弁解した。
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「今度の事なんかお久美さんに何にも罪は無いじゃあ有りませんか、
 山田の夫婦で仕た事なんで
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