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と云ったと云う事を幾度か幾度か繰り返して※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に話して聞かせた。
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「ほんとにひどい。
 彼《あ》あも悪く出来た人は見た事がないよ。
 それもさ、
 丁寧に訳でも話して願って来れば又どう考えなおすまい者でもないのに、お前、まるであたり前の様な顔をして、
 『種々な必要に迫られたものでしてな、
 お断りせんかったのは悪かった』
 と云った丈だよ。
 そりゃあね、彼の人が今年はどの位困ったかは大凡《おおよそ》分って居るのだから、事を分けて返した物は返した物でそっくり持って来てから話しでも有れば相見互な事だから用立てても上げ様ものをさ、
 年寄りだと思って踏みつけられて居るのを思うと、それ丈でも口惜しくって口惜しくって居られないよ。
 だから、ほら、先お前が行った時、お関が種々云って間へ外の人を入れさせまいとしたのさ、
 私はもうほんとに考えた丈でブルブルするよ。
 よってたかって剥ぎ取る工面許りして居るのを思うと、夜もおちおちは眠られやしない。
 だまそうと掛れば掛る程此方じゃだまされちゃ居ら
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