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「お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんと私とは生れからして違うんだもの、
どうせ分りっこありはしないわ。
私の心配は私一人で切り盛り仕て行かなけりゃあならない、ましてこの頃の様な事はね。
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と云う事をはっきり思って居た。
十四
山田の養子の事や何や彼で皆がザワザワと口数多く成って居る間に※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の祖母が気に病んで居た橋本の貸し金の事は思わぬ落着を告げた。
重三が来た許りだのに金の話でも有るまいと控えて居た祖母もあんまり埒が明かないのに業を煮やして、到々人をやって、もう公に成っても自分は介わないから町の弁護士に頼むからと云った晩、山田の主人は来て、他人の噂をして居る様な口調で、橋本からはすっかり借りた丈の物に礼まで添えて返したのだけれ共、種々已を得ない事情が有ったので、自分が又借りを仕て仕舞ったと云う事を話して行った。
祖母は涙の出る程怒って、
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「そりゃあ私もお返しする積りで居るんですからな、
まあ、もうちっとお待ちなすって下さい
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