れば響ける様な声で歌を歌ったりして居る様子を思い浮べた。
 彼那に楽に彼那に好きに仕て居れば誰だって利口になれると思えた。
 どんな人だって、自分に仕て呉れる位の力添えや相談は仕て呉れるにきまって居ると思えた。
 彼んな暮しを仕て居る人に到底今の私の苦労が分るものじゃあ無いと、お久美さんは此頃めっきり育って、種々※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の知っては居ないと思われる感情を経験した自分の心を尊く眺めた。
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「お※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さんなんてほんとに世間知らずだわね。
 そりゃあ呑気なのよ。
 彼那子供みたいな風をして一日中勝手な事ばっかりして暮して居るんだもの。
 やっぱり年が若いんだわね。
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等と独言の様に云って※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の事と云えば賞めるとしか思って居ない小女を驚かせたりして居た。
 お久美さんは今までの此那に長かった間何故自分が斯う思わずに過して来られたかと云う事が疑われる様で、七年の間の事が皆他所の噂を聞く様な気がした。
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