いかと思う程無茶苦茶に成って仕舞って、陰気な様子でせっせと動いて居るお久美さんを罪も無いのに当り散らしたり故意と引きかぶった様子をして一日長火鉢の傍へ、へばり付いて居たりした。
 一日一日と立つに連れて贔屓目《ひいきめ》で見て居るお関にも重三の足りないのが目に余って来るので、自分の夫、周囲の人全体を偽って其那子を連れ出して来た罪が皆自分一人に報いられて来る様な気がして居た。
 今の内なら理屈の付かない事もないから帰して仕舞う方も好いかと思ったりしたけれ共、切角斯うやって運が向いて、阿母さん阿母さんと呼ばれて一緒に暮して居られるものを無理にそうも出来兼ねてお関は今までに覚えた事のない程気の弱い日を送った。
 重三の嫁の事等は勿論お関の念頭に無かった。
 村の者等が話の次手に、
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「それで何ですか、
 お久美さんとでも御一緒になさるお積りなんですか。
[#ここで字下げ終わり]
と云い等すると、
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「いいえね、
 お久美はお久美で彼れには彼で別に何ぞ似合いの人が有ったら御世話願おうとも思ってますんですが、
 何ですか一向どうも。
[#ここで字下げ終
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