を捕えて、
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「どうするんですよ、彼れは。
 此間※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子さんが来てからもう幾日立って居ると思ってるんです。
 ほんとうに町の人でも中に入って御覧なさい、
 皆知れて貴方は赤い着物だのにね。
 一日たのまれもしない人の世話を焼いて自分の始末も出来ないなんて、お話しにも成りゃあしない、馬鹿馬鹿しくて。
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と責め立てても、畳の上にごろ寝をして煤のたまった天井をながめながら主人は、
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「俺は知らんよ、
 勝手におし。
 お前みたいに怒鳴ったら使った金が戻るだろうよ。
 なあ重。
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と、傍に長く成って居る重三に同意を求める様な事許り云って真面目に聞こうとも仕なかった。
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「重、お前も少しは考えておくれな。
 私一人でどうにも成るもんじゃあない。
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と泣き就いても重三は重三で、
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「わしは何の事か知らん――お阿母さん。
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と云う許りなので、お関は気でもどうか成りゃあ仕ま
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