然な仕打ちを笑ったり、木偶の様に口一つ利かないで行った重三の気の利かなさを彼此れ云った丈で、その※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子を喫驚させた口元については気のついた者もないらしかった。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は他家の事だと思って黙って居た。

        十二

 山田で養子をした事は此の狭い村での一事件で有った。何の話も無くて居た所へ突然お関が重三を連れて、
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「今度之が家の後を取る事に成りましたから、何分とも宜敷く。
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と云って廻った事は皆の反感を買って、数える様な家並みでどうせ後から知れる様な事々は相談する様な体裁で吹聴仕合って居る者達は、
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「余り踏み付けた仕打ちじゃあ有りませんか。
 お前達なんかはどうでも好いぞと云う様な風を見せられちゃ、何ぼ私共みたいな土百姓でも虫が黙って居ませんや。
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などと云い合って、当分は何処でもその噂で持ち切りの有様だった。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の家へ来る者共でも
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