まった様な男を養子にする積りに成ったのだろう。物好きだと思って何の気なしお関と重三の顔を見くらべて居た※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、二人が余り以て反っ歯なのに驚ろかされた。
猿に近い程にお関は歯がズーッと出て生えて居る。
重三はお関程ひどくはない。
けれ共唇が合い切れない様に僅かの隙を作って外に向いた歯を被うて居る所は、どう見ても似て居ないとは云えない。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は好奇心に動かされて尚幾度も幾度も見なおしたけれ共、一度毎にその事は明かになって来て、気の故《せい》か頸の辺の皮膚の荒さまでそっくりの様に思えて来た。
忌わしい疑問が忽ち※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の胸一杯に拡がった。
十五分程して他所へも行かなければならないと云って二人が帰るまで、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は怖ろしい気持に成って、二つの顔を見くらべて居た。
帰って仕舞ってからも※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の家は一日中お関の養子の噂で持ち切って居た。
皆その突
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