そりゃあ何より結構な。
 お年頃もよし、お体もお健者そうで、何よりですわ。
 まあまあ、其れで御主人も御安心でしょう。
[#ここで字下げ終わり]
と云った。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、二人がしきりに喋って居る間中静かに座ったままで其の重三と云う二十六の男を観て居た。
 殆ど滑稽に感じた程其の男の態度は取りたての熊的で有った。
 まるで借り着をした様な着物の着振りから、上の空の様に座って居る座布団付の悪さから、どうしても昨日まで鍬を握って居た男とほか思えない筋肉の異常な発達を見ると始めて、軽い安心仕た様な気持に成った。
 之ならお久美さんも自分に無関係で有った事を喜ぶに違いない。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は心の中で却って重三の愚直らしい顔つきから物腰しをよろこんだ。
 黒々と日に焼けた角張った顔、重々しく太った鼻、頭の地にぴったり貼り付いた様に生えて居る細い縮れて疎《まばら》な髪、其等は皆※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に不吉な連想を起させた。
 どうしてお関夫婦も此那見掛けからして利口でないに定
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