を訪ねた。
 女中は、いつもになく改まって丸帯に帷子《かたびら》を着て、
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「御隠居様はお居でですか。
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と云ったお関にも驚いたけれ共尚々その後に控えて居る重三の様子にすっかり面喰った。
 其の様子を聞いた祖母も※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子もちゃんとした身じまいをしてわざわざ滅多に人の行かない客間を明けて通した。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は大方其の養子とか云うのだろうとは思ったけれ共黙って出て行って見ると、将してそうで、得意の鼻を高々とお関は二人に養子を紹介した。
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「重三と申しましてね。取って二十六になりますんですよ。
 Y市の士族の二番目なんでございますがね、余り話が急にまとまりましたんで、まだ何処様へもお話し申して置きませんでしたから、さぞ喫驚遊ばしたでございましょうねえ。
 行き届きませんが、どうぞ何分よろしく御願い申します。
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 祖母は流石年を取って居るだけあって度魂を抜かれながらも、
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「まあそうですか。
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