頼もしそうに眺めながら、
[#ここから1字下げ]
「好い娘さんになりましたねえ。
年頃と云うものは争われないもんですねえ、先の時分は痩せた様な体をして居なすったっけが、声でも何でもまるで違う。
[#ここで字下げ終わり]
と笑いながら云って居た。
赤い着物に包まった赤坊をお久美さんは宝物の様な気持で抱く事が出来た。
世界中の事と人とが皆自分の為に動いて居る様で、哀れな者に恵まずには居られなかった。
人の罪を庇わずには居られなかった。
今まで無心に繰し[#「繰し」に「(ママ)」の注記]て居た祈祷も今は明かに自分の慰めと成り、神の名を一度称える毎に心が高まって行くのを感じて居た。
朝夕の祈りに敬虔な気持で連り、静かな夜の最中、冴え渡った月の明るい時などには云い知れぬ霊感に打たれて、髪を震わせながら涙をこぼす事さえ有った。
お久美さんの身内には幸福が血行と共に高鳴りして居るので有った。
一日一時を非常に長く、お久美さんは四五日の日を送った。
六日目の日午後から三人で帰ると云う知らせを受けて、お久美さんは体中が堅く成った様に感じながら村の家へ帰った。
黙ってせっせとそう片付け
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