幸福な世界の開拓者で有ると思うのは決して無理では無い。
 其れが事実と成って開展され得る事なら※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は共に微笑もし夢見る様な歓びを分つ事も出来様。
 けれ共決してそうは成らない事とは※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子に明かに分って居た。
 お関の病的な心は、若しお久美さんが当然その位置に有ってもその頭に新婦の環飾りをのせさせるものではない。
 輝いたお久美さんの体、押え切れない力で差し上って来るおだやかな微笑を※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、寒い様に悲しい気持で見て居た。
 いずれは見なければならない悲しみの極みまで無心で居るお久美さんを歩ませて行くのは忍び難い事で有ったけれ共、又今切角お久美さんの心の前に美くしく現われて居る蜃気楼を自分の一言で打ち崩す事も出来なかった。
 若しかするとと云う偶然を頼んで※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は到々一言もお久美さんの心に立ち入った事を云わずに仕舞った。
 年若い娘の羞恥から自分のときめいて居る心を、小躍りして歌って居る思いを「何
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