さんは何を思ったのかポーッと顔を赤くして羞《はにか》む様に微笑するのを見て※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は何も彼もすっかり分った様な気がして薄笑いをしながら頭を左右に揺り動かして、苦労をしながらも単純な女らしい夢心地に支配されて居るお久美さんの可愛らしい霊を想って居た。
来るべき歓びを期待して居る成熟した体の隅々に普く行き渡って居る柔和と謙譲と恥らいを見出すと※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は殆ど痛ましい様な気持になって仕舞った。
未知の若者を自分の王者とも君主とも想像して居るお久美さんは此の力強い夏の日をどれ位幸福に感じて浴して居るのだか知れない。
幾日かの後、自分の前に展らかれる永劫の花園の微な薫香を吹き渡る風に感じて居るのに違いない。
年若い娘の中に在って、自己の征服者を待ち焦れて居る彼女等の願望の強さ、強者の前に身も心も捧げ様とする若い霊の焔に驚かされもし悲しまされても居る※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は、不幸に不幸の続いた十九年の年月を暗く送ったお久美さんが不意に現われ様として居る若者に対して自分の
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