人達は何のために今頃行ったの。
 暑いのに大変でしょうねえ。
「養子に成る人を迎えに行ったのよ。
「え?
 養子。
 まあ養子なんかするの、彼那家だのに。
「まあ、可哀そうに、
 いくらあんな家だって貧亡[#「亡」に「(ママ)」の注記]ながら後取りは入用《い》るわ。
「へえ。
 私始めて聞いた。一体いつから出て居たの、其那話。
「いつからも何も有りはしないわ、
 昨日の晩始めて私聞いたんですもの。
「そいで、今日もう迎に行くの。
 まあ何て突拍子もない家なんでしょう。
 養子なんて云う大切な事をそうじきにさっさと片づけて仕舞うなんてね。
 一体どんな人なの。
「私知らないわ。
「年も名も知らないの。
「ええ。
 私に聞かせないんですもの。
「だって、まあ、あんまりじゃあ有りませんか。
 まあ、それにしても変ですねえ、
 そうじきに養子に丁度好い人が見付かるなんて。
 第一、先の人は彼の家がどんな家でどんな人が集まって居るんだか知って居るんでしょうか。
 知って居ちゃあ来る者がなさそうだけれど。
「ほんとにね。
 だけれ共、矢っ張り縁が有るんでしょう。
[#ここで字下げ終わり]
 お久美
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