面白く見守って居た。
 いつも此の位晴れ晴れと美くしくあって欲しいとさえ思われた。
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「ほんとにまあ、貴女も辛いわねえ、
 あんな人の傍に居るんだから。
 何か好い事が無いでしょうかねえ。
「ええ、ほんとよ。
 伯母さんさえ人並で居て呉れたらと思う事よ。
 伯父さんは変だけれ共彼那じゃあないもの。
 でも此頃はほんとに好いわ、私。
[#ここで字下げ終わり]
 最後の一句をお久美さんは何とも云えない細く優しい声で心から云って、こみあげて来る感情を押えるに力の足りない様に膝をムズムズ動かしたり下を向いて後れ毛を丁寧に耳のわきに掻き上げたりした。
 ※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は何だか心に陰が差して来る様な気持になって、
[#ここから1字下げ]
「何がそんなに好いの、此の頃。
 私にも半分位分けても好いでしょう。
 貴女みたいに嬉しそうな事はちっとも私には来ないんだから。
[#ここで字下げ終わり]
と云って淋しく微笑んだ。
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「まあ。
 何でもないのよ。
 第一私そんなに嬉しがってやしないわ。
「そう。
 それはそうと彼の
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