くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]さん、
私もう他所へ出ようかと思って居るのよ、此頃。
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と口を切った。
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「どうして?
「もう彼の家が厭で厭でたまらないんですもの、
ほんとに居たたまれないわ、私。
「そんななの、
だって、今まで彼那に長い間貴女堪えて来たんじゃあないの。
「だって、この頃は余計そうなのよ。
私もうほんとにいや。
「だっても家を出るって、どうするの。
「どっかへ奉公にでも行く事よ。
もうその方がどい丈好いか知れないわ。
つまらないんですもの、斯うして居たってね。
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※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はお久美さんの打ち明けかねて居る気持を大方は察しる事が出来たけれ共、どれ程の思い違いと混惑が起って居るのかは知る事が出来なかったので、到々思い切ってお久美さんの気を引くために、
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「貴方の所へ今度来た方ね、
どんな人。
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と云って見た。
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「重三さん?
「ええ。
「私、分らないわ。
「そんな事あるもんですか。
一体どんな性質なの。
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お久美さんは引きしまった顔をうつむけて乾いた土を見て居たが、いきなり頭をもたげると、
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「大馬鹿よ!
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と、※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子が喫驚した程鋭い声で叫ぶ様に云って、ニヤニヤと意味ありげな微笑を洩した。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子はその古代の彫像の或る者に現わされて居る様な計り知れない程複雑した微笑のかげから何物かを得ようとして、常とはまるで異って居るお久美さんを厳格な気持で眺めた。
※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は陰気になって、その高く短く空の中に飛び去って仕舞った
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「大馬鹿よ!
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と云う一句の響きを思い返した。
非常に皮肉らしくあった。
又大変悲しそうでもあった。
苦しい苦しい物を吐き出した様な響であった事を思うと、お久美さんが単に重三の噂の心持にはなれないで居たに違いないと思われて来ると、恐ろしい気持が※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子の胸一杯になった。
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「まあ、まさか。
でも大馬鹿でも介いやしませんね。
彼の人が好きで自分の養子に仕たんだもの、
貴女には何にも関係がない。
ほんとに何にも関係がありゃあしないんだもの、
ねえ、お久美さん。
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※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は殆ど涙の出そうなまで悲しい気持になって居た。
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「ええ、そうでしょうよ。
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お久美さんは非常に投げやりな口調で云うと、恐ろしく神経的に袂の先をピンピン引っぱりながら涙を一杯目に浮べて来た。
その様子を見ると※[#「くさかんむり/惠」、第3水準1−91−24]子は堪えられない様になりながら非常に興奮して、
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「お久美さん、貴女何か思い違いをして居ますよ。
あの人は只彼の家の息子になって来たので貴女にはほんとに何でもない人なんですよ。
貴女きっと自分について何か不安がってるんでしょう。
第一お関って云う人がそう事を運んで行く人じゃあありませんもの。
ほんとうに貴女は何か取り越し苦労をして居るんじゃあないの。
私には大抵分っては居るけれど、そりゃあ余り心配の仕すぎじゃあ有りませんか。
「貴女は何も知らないからそんな呑気な事云って居らっしゃるけれど、どうだか分らないじゃあないの。
彼の人があんな足りない者だから余計私を苦しめる積りでどうかするかもしれないじゃあないの。
「だから、それが思いすぎなのよ。
貴女に対して感じて居る通りの嫉妬を矢っ張り今度来た人にだって持つに極って居るじゃあありませんか。
貴女の邪魔をする通りに重三とか云う人の事も取り扱って行くにきまって居るわ。
重三と云う人にだって一生嫁は取らせない積りで居るんでしょう、きっと。自分が先に死ななくちゃあならないなんて思わずに。
だから大丈夫よ。
「いいえ、大丈夫だなんて分るもんですか。
私はきっと彼の人の事だからそうでもするに極って居ると思うわ。
第一そりゃあ自分で大切がって居るんですもの。
「大切がるなんて……
そりゃあ只珍らしい内の事丈なんでしょう。
何にしろ貴女なんか今のままなのだから安心して居らっしゃいよ、ね。
心配したって仕様がないわ。
そりゃあきっとそ
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