辛いのです。真個に友子さんの云う通り、私は不幸なのだ、と思うと、政子さんには、訳もなく、寂しく情けなくなって来たのです。
知らないうちに、政子さんは友子さんに同情されたのを喜んでいました。同情されると、政子さんは、到頭、
「其は随分いやな事だってあるわ」
と云いながら、涙組んでしまいました。
「そうでしょうね」
何か考えるように首を傾《かし》げていた友子さんは、やがて政子さんの手を優しく撫でながら申しました。
「私達はこれから仲よしになりましょうね、政子さん、貴女の辛いことを、私出来る丈少くして上げることよね、政子さん。うちのお母様だってどんなにかお気の毒だと思っていらっしゃるわ」
政子さんは、此の年上のお友達が、どう云う積りでそんな事を云い出したのか、訳が分りませんでした。けれども人と云うものは、どんな時にでも親切な、自分の辛いと思う事を辛いだろうと云って呉れる人を悦ぶものです。
政子さんは芳子さんの悪口を云う人と仲よしになるのは何だかすまないような心持もしながら、それでも嬉しがらずにはいられませんでした。
先生のお手伝をして、理科の標本室から教室を往復していた芳子さんは
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