一等立派なのだと云う事になってしまうのです。友子さんは真個にそう云う尊い立派な心を持っているのでしょうか。
「芳子さんは、それだから私嫌い。貴女にだってきっと親切ではないに定っているわ。心の中では、きっと貴女を見下げて、いらっしゃるのよ、貴女真個に仰云いな、彼の方は、貴女に親切じゃあないでしょう、え、政子さん」
「親切でないって……普通だわ」
「そうかしら、」
 友子さんは、長い絽の着物の袂を、紫色の袴の上に揃えながら、疑しそうな顔をしました。
「何か貴女が辛いとお思いになることはなくって? 芳子さんが叱られないのに、貴女だけ叱られるような事はない? 芳子さんは、真個の子だけれども、貴女はそうじゃあないんですもの……私お可哀そうだと思うわ、真個に。うちの御母様のお母様は継母だったんですって、今でも辛かったってよく仰云るわ、だから私御同情するのよ」
 こんなに云われると、只さえ淋しい、悲しい心持になっている政子さんは、堪らない心持になってしまいました。
 芳子さんが不親切なのだと、はっきり思うのでもありませんし、自分がどう云う辛い目に会ったと云うのでもありません。けれども、只気持だけで、
前へ 次へ
全17ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング