いとこ同志
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)両人《ふたり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大変|流行《はや》った

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(例)[#ここから1字下げ]
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 今からもう二十一二年昔、築地の方に、Sと云う女学校がありました。その女学校の一年の組に、政子さんと芳子さんと云う生徒が居りました。私はこれから此の両人《ふたり》と、両人のお友達だった友子さんと云う人との間にあった事を皆さんに聞いて戴こうとするのです。
 政子さんと芳子さんとは、従姉妹同志で、小学校の時分から、一緒の家に住んでいました。政子さんのお父様は立派な学者でしたが、体がお弱くて、早くお没《なく》なりになり、お母様も直ぐ死んでおしまいになったので、まだ小さい政子さんはたった一人ぼっちの可哀そうな子供になってしまいました。そこで、伯父様に当る芳子さんの御両親が、自分の子のようにして、育ててあげて来たのです。
 政子さんは、何でも芳子さんと同じにして大きくなりました。同い年で小学校を卒業し、同い年で同じ学校に入り、
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