両人は真個《ほんとう》の仲よしで行く筈なのでした。
 芳子さんは、政子さんが、自分よりは可哀そうな身の上であるのをよく知っていましたから、いつも同情して政子さんの為に成るように、政子さんが幸福に楽しく暮せるようにとばかり、気をつけていたのです。
 こうして両人ともほんとうの子供だった時、何の不平もなく何のいやな事もなく過ぎていました。けれども段々大きく成って来ると、両人とも今まで知らなかった沢山の事を知るように成って来ました。先は、ちょっとも悲しい事でなかった事が、此の頃は大変悲しく感じられたり、先は綺麗と思った事もない花が、急に美くしい立派なものだと分って来たり――誰でもそう云う時がございますね、両人とも段々そう云う時に成って来ました。
 そうすると、今までは別にそれ程に思わなかった、自分は孤児だという事を、政子さんは此上なく寂しく辛く感じるようになりました。勿論両親のないと云う事は、真個に不幸な事です。けれども、もう死なれてしまった方がいらっしゃればよいと、いくら泣いても怒っても、仕方のない事ではありませんでしょうか。
 それに又、片方の方々が死なれたと云う事は、決して親と子をすっ
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