しょう』
[#ここで字下げ終わり]
と云って貰いたくなったのです。
政子さんにそう云う心持が起って来ると、世界中が、急に辛く、悲しく、意地悪いもの許りの集りのように見えて来ました。
物を見るのも、感じるのも、みな心の働でございますものね。政子さんが、そういう心持になれば、直ぐ何でもが、心の思う通りに見えたり感じられたりするのは、あたりまえです。その日も、いつもの通りお昼休が来ると、政子さんは淋しそうな顔をして、校舎の裏にある芝生へ参りました。
広い学校の裏はずうっと小高い丘に成っていて、丘の上にはいつでも青々とした樫の古木が、一ぱいに茂っていました。
お天気の好い日には、其の沢山の葉が、みな日光にキラキラと輝き、下萌えの草は風に戦ぎ、何処か見えない枝の蔭で囀る小鳥の声が、チイチクチクチクと、楽しそうに合唱します。真個に輝く太陽や、樹や小鳥は、美しゅうございます。
政子さんも、それらの平和な者達に取りかこまれながら、晴々と高い空の下に坐っているのが大好きでした。
おきまりの場所になっている芝生の上に坐って、ぼんやりと、空に浮んだり消えたりする白い雲を眺めていた政子さんは、暫く
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