とき文学は階級性をふくまずに在り得ない現実がのみこめた。そして、まごころをもって芸術を愛し、人間の創造力に価値を見出すものであるなら、謂わば芸術至上の現実的過程としてさえも、ブルジョア社会の文学は自身の発展のために社会主義への方向をとるしかないことを確信するようになった。
ロシアの革命の歴史をみると、そこには人類の宝のような優秀な無垢な人々の活動が見出される。同時に、その社会のあらゆる悪計と詭略と恥しらずを身にそなえたフーシエの徒輩も見出される。階級社会の力が面と面とをむけて格闘する革命の現実のうちにこそ、その革命の時代の最も典型的な諸事件と諸性格とがある。小市民的な日常と「個性」のうまやにとじこめられていた人類の伸びようとする精神は、二十世紀はじめのフランスのデガダニストたちのように、遂にわが身一つを破り分裂させることにおいてではなく、発展させられる方向が社会主義のうちにこそあるということがわかった。二十世紀に入ってから世界の文学は、絶えず自身を新しく生れかわらそうとして七転八倒しつづけて来たが、その意味では第一次大戦後におこったシュール・リアリズムさえも、古い資本主義社会の機能の
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