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けがれたまねは しまいと思う
しっかりと 何よりもまず
自らに立派で あろうと思う
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 この生きる態度の決意と愛と真実をこの世に信じる心とは女詩人としての竹内さんの一途の道であると思える。そして、この一途の道は永年にわたる極めて独特な神谷氏との感情生活や、作者の年齢や心情のゆるぎを階子として「オリオンやシリウスたち」「アルゴ星」のように天へ向って高まり、或は「落葉をたく」「萩咲く」のような静的なリリシズムに曲折するのであろう。この愛についても例外的な境地に生きる女詩人が、今既にある峯に立っているその境地のなかで、そのような想念と情緒とをどのように展開し、すこやかに渾然と成熟させてゆくか。愛という字をつかわずに、人々の心に愛の火を点じてゆく芸術の奥義が、どんなにしてかちとられてゆくか、それは明日に待たれてよいのだと思う。
 それにしても、女の芸術家の響き立てる女というものの気配は、何と微妙で面白いだろう。竹内さんの詩の心は、例えば苦悩についても、それが衆生のものでなくて、私ひとりのものであったら、何を矜持として生きるものか、とうたわれている
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