『静かなる愛』と『諸国の天女』
――竹内てるよ氏と永瀬清子氏の詩集――
宮本百合子
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貧困というものは、云ってみれば今日世界にみちている。病気というものも、その貧困ときりはなせない悲しいつながりをもって今日の世界にみちている。今日の社会感情のなかでは、貧しさと病とに対して闘っている人々の余りの多さのために、おどろきが失われて普通のことがらの一つでもあるかのようになってさえいる。沁々考えてみると、そういう共通な不幸に感じを鈍くさせられて生きている生活の条件の荒っぽさ、冷血さはおそろしいと思う。更にもう一歩すすんで生活を観察すると、貧困といい病といい、それを受ける人の身が男であるか、女であるかということで、同じうち克つべき不幸ながらそこに深刻な相異がおこって来ているのも一つの現実ではないだろうか。
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