てかなしいくらいふしぎな責任。
それは絶望してはならないことだ。
それは天地の底からの母親ごころがゆるさないのだ。
古今のすぐれた女性は皆この人生へのいたわりを持っている。
デカダンスは男のものである。
特に現代に於いては。(デカダンスは)
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竹内てるよさんの「静かなる愛」の表現とこの永瀬さんのこの詩の言葉とは何と相異しながら、女性としての感覚においては同じ本質をもっていることだろう。
永瀬さんは、女の歴史、日本の女の成長の酸苦を「麦死なず」のなかにうたっている。
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私らにとっては樹木が自然の季節を知るように自明であることはなんにもない。
どんなことでも私らは迷って見なければならないのだ。
彷徨しないために一生さえ彷徨しなければならないのだ。
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その女の歴史の切ない必然を見ることをしない男たちは
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自分らの不明を反省するより
浅はかな理想の幻影に
エキセントリックなまでに殉じようとした彼女らをあざける。
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と、正当な怒りが向けられている。「麦死なず」とい
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