う。菊池寛にそのようなものとして描き出された天女が、諸国にすまって

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きずなは地にあこがれは空に
冬すぎ春来て暮すうち、いつしか
おゝ詩はやわらかい言葉のためにあるのではない
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とうたい出すようにもなって来たということは、ほんとに面白いことだと思う。現代の天女は話しがないどころか、自身が女の習俗で習慣づけられて来た「論理のどもり」を自ら知り、「素描」の新鮮な感性の価値を影響に研こうと欲し「女性は文学に死せず」や「皮膚をきたえん」には女性と芸術との厳しく隠微な関係さえとらえられ考えられうたわれている。
 永瀬さんが今日の日本の女性の詩人として示している独特な美と力とは、女心が縷々《るる》として感じてうたう自然発生の魅力ばかりを鑑賞されることにたよっていないで、女が考える、という合理的な事実を承認して、それをまざまざとした感性で表現してゆく天稟をもっているところに在ると思う。「ギリシャの海では」「デカダンスは」「約束せぬ恋」「女性の価値標準」などは、そういう意味で女の成長のためのたたかいをうたってもいる。

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女性とし
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