偶を失った女の人たち、その家族を失った子供たちのために、「救済」という形が考えられているうちは、たとえそれが部分的にかなりゆきとどいた方式でされようとも、世界人類の頭上を不吉なはげたかのように舞っている不幸の本質がとりのぞかれることにはならない。その「救済」さえ日本ではなげすてられている。戦争によってひきおこされたすべての国の不幸な経験は、戦争そのものの根絶という方向へ生き越され、くみとられてゆかなければならないと思う。そして世界はそのように動いている。日本だけが、何とでもしてこれから戦争へまきこまれることさえなければそれでいいのだ、という考えかたは実際的でない。直接うちに焼夷弾さえおちなければ何とか助かるだろう、と思っていたひとは幾十万かあっただろう。だが、それらの人々も、住むところを失ったのだった。戦争は、地球から絶滅されなければならない。いくらそうは云っても、現実問題としてなかなか戦争というものは無くなりはしないだろう。それが常識として通る限り、ますます根気づよく、正直に戦争の絶滅は要求され、戦争挑発はしりぞけられなければならない。
手記の集められたこの一巻を読むとき、わたした
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