美くしい薄命な海の花はしずかに音もなく散ってしまいました。
運命の車
いくら大きな目をあけて見ても見えきれないような大きな一つの車の輪がある。その輪のはじからは大きな恐ろしげなつめたいかぎが出て居る。その中心からつづいた棒を一人の女がにぎって自分の勝手の様にまわして居る。その車はまわるごとに地球の上に住んで居る人間の頭の上を一度ずつきっとかすって行く。そのたんびに人間は知らず知らずに一人ずつぶらさげられて行く、或る時はしずかに順々に引く所から高い所にあげてそしていつまでもそこに手をとめていきなり大変な勢で地面にたたきつけたり又或る時は急に高く急に低くしてもう少しで落ちそうにしてもまだおとさずにまた高くあげて低い所までもって来てソーと地面におく、その車の動くたんびに人間は富んだり貧しかったりして青くなったり赤くなったりして居る。そうしてさんざん動したあげく人間は段々やせてしまいには骨とかわ許りになってしまう。そうすると運命の握権者は「ようやっとこれで一人かたづいた。又このあとがある」と云って車をまわす。
逢魔ヶ時
逢魔ヶ時のうすあかりの都大路を若い男女、老
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