すよ。私が二十一で様をかえたのも人はめずらしい事に云い又自分でもそう思って居りましたけどいま貴女の出家にくらべて見れば事のかずにも入りませんものネ、昔の事なんかなんでもう思うもんですか、サア、みんな一所に行いすましましょうネ」と四人同じ庵室の中に念仏して共に後世の幸をいのったけれ共おそい早いはあったけれ共おしまいには皆同じ様に往生の望をとげたときいて居る。その後入道は仏の行方がわからなくなったので、手に手をわけてさがさせて見たけれ共見つからなかったので浄海は「仏はあんまり美くしかったんでてんぐが取ってつれて行ってしまったんだろう」と云って居た。其の後半年許りたってからそこに居ると云う事が聞き出されたけれ共そんな風になったものを今更と云ってもうたずねさせなかった。それだもんで後白河法皇の長講堂の過去帳にも義王義女仏|閉《トジ》等のが尊霊と一所に書き入れられたと云うことである。

     海の花

 南の国のいつも蒼い色をして居る内海に一匹の人魚が棲んで居ました。その長い黒髪やふくよかな乳房、よく育った白くて長いうでなどをもったその姿はこの海の女王として恥かしくありませんでした。細くそろ
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