がれたので三人の人達は一つ所にあつまって仏前に花や香をそなえあかりをほそほそあげながら念仏して居た所に閉じ塞いだ柴のあみ戸をホトホトとたたく音がした。三人の人達は念仏をやめて「これはきっと私達のような無智文盲な物の念仏して居るのをじゃましようと云って魔の来たのにちがいない。しかしもしもそんならばあんな竹のあみどをおしあけて入る事はぞうさないでしょうに、早くあけよう、助とたのみにするのは仏一つ、たとえ命をとられるとも、この頃たのみ奉る念仏をして心しておこたってはいけませんよ」と云って三人は手をとりあって閉めきった竹の編戸を思いきってあけると魔なんかではなく思いがけない仏御前が出て来た。義王は走り出て仏の袂にとりついて「こんな所でお目にかかるのはほんとうに夢の様でございます事、昼でさえも人のまれな山里へ今|何《ど》うして来らっしゃったのでございますか」と云ったらば仏御前「今更、あの時の事を云えば新しい事の様ですけれ共又、申さなければ考えて居ない様ですから申しますよ。元から私は推参のもので望のない仰をこうぶって遠く出たのを貴女の御口の御かげで召されたとは云え、すぐに貴女の御ひまをお出されにな
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