に身をなげさせるのは五逆罪であろう。ミダ如来は西方浄土を荘厳し一念十念をもきらわず十悪五逆罪をもみちびこう」と云う。
義王「ほんとうに死ぬ時も来ない親に身を投げさせるのは五逆罪うたがいがない」と云って身をなげるのを思いとどまって二十一で様をかえてしまった。妹の義女も一所にと約束した事だから十九だのに様をかえてしまった。母の閉《トジ》は「あんなに盛の二人の娘が様をかえるの世の中に私が年をとった白髪をつけて居ても何にもならない」と云って四十五で様をかえてしまった。三人は嵯峨の奥の山里に念仏して往生必定臨終正念と祈った。こうやって居て春がすぎて夏も来た。秋の風が吹き初めると星の沢山の空をながめながら天を渡る梶の葉におもう事をかく頃となった。ものを思わない心配のない人でさえもくれて行く秋の夕べの景色はかなしいだろう。まして心配のある人の心の内がおしはかられて可哀そうである。西の山の端に入りかかる日を見ては「あすこいらはきっと西方浄土でしょうからいつか私達もあすこに生れて心配なしにすごすことが出来るでしょう」それにつけても昔の事の忘れられないでいつもつきないで出るのは涙許りである。日は段々たそ
前へ
次へ
全52ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング