と妹の義女もつれて行く。同じ様な白拍子二人、すっかりで四人、一つ車にのって西八條の御館へ行く。入道は、先の内よばれた所よりズット下った所に坐をとって置かれた。「コレはマア何と云う事だろう。そして何のおとがめでこんなに、坐敷さえ下げられて、マア何と云うつらい事だろう。それにつけても今日自分は何しに来たんだろう」と思うと又悲しさがこみ上げて来る。そのけしきを人に見られまいと顔をおさえる袖の下からも涙があまってながれた。仏御前、「ここは先の中御呼入になった事のない所でもございませんもの。ここに御呼び遊ばせ。それでなければ私が出て御目にかかりましょう」と云ったけれ共入道が「何々」と云ってさからうのでどうする事も出来ない。其の後入道があって「どうだネ義王、その後何か変った事もあったかネ。仏があんまり退屈そうだから何か今様一つ歌ってくれ」とおっしゃるのでこうやって来たからには、入道殿の云いつけと云えばどうしてもきかなくてはならないものだと思って落る涙をおさえて今様を一つ歌った。
[#ここから2字下げ]
月更け風おさまつて後、心の奥をたづぬれば仏も元は凡夫なり、我等も思へば仏なり、いづれも仏性具せる
前へ 次へ
全52ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング