ニティーの主張において具体性をそなえて来た。実践的な力をそなえて来て、組織と行動の意味を把握して来た。こんにち、第三次大戦の挑発に対して、全世界の規模で実行されつつある民族自立の運動と平和擁護の運動の現実が、この事実を明瞭に語っている。
 世界各国で、それぞれの国の文学は、質的に変化し、発展しようとしている。社会主義リアリズムは、やがて世界の文芸思潮となるだろう。それぞれの国のそれぞれの現実によってヴァリエーションが加えられつつもそうなってゆかなければ、従来のフランス文学の方法では必しも新しいフランス人を描けないことはわかって来ているのだし、日本の現代文学は日本の社会の現実にある動き、人間的諸関係を描ききれなくなっているのだから。

 人間みずからが、資本主義社会の人間性歪曲とその断片化から自身の歴史を救い出そうとしているこんにちの努力と、それを再現しようとする文学上の実験は、一部の文芸批評家が云うように、決して、社会主義的アイディアリズムではない。過去のブルジョア文学の文学についての観念は、おおかたが、資本主義の社会機構に対する抵抗を放棄したところから多岐に発展――というよりも末節化
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