いる現代では、ソヴェト同盟の社会が、矛盾や不十分さをもつとは云え、大局においてその生産方法において、国際外交において人類の発展的方向をめざしていることが語られることは、人民の善意が国際的になっているこんにちの現実の性格から自然である。
これらのすべての点をひっくるめて、わたしたちは、新しく成長しつつある人間像を再現しようとしている。ひとことに云ってみると、それは、資本主義社会の現実によってこの二世紀ばかりの間にその外部的・内部的生存をきりこまざかれてしまった人間性《ヒュマニティー》を、二十世紀の後半において、新しい社会的人間統一に復活させようと熱望して、そのような意志と理性をもってきょうの歴史の現実の中に精力的にたたかい生きつつある人間像を、描きたいとねがうのである。
戦争の年々、日本の人民生活の荒廃の中で、せめても人間性を守り、それを失うまいとする願いは、切実であった。軍協力の文学ではなくて、人間理性をみとめ、条理を理解し、人間心情に立つ文学の可能を防衛しようとする意嚮も、真実だった。しかし、第二次大戦を通じて、世界の人間性《ヒュマニティー》は、過去の歴史のいつのときよりもヒュマ
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