はげまし、互の共感を、最も新しい生活感情の一つとしている。わたしたちの生活の中で、中国人民の人民的成果は羽ばたたいているのだし、ヴェトナムや朝鮮の人々の勇気は、その脈動をつたえている。わたしたちの文学は、当然、異国趣味でない国際的関係とその感情、世界史の積極的発現への評価をふくむはずである。地球上にはじめてあらわれてその建設にいそしんでいるソヴェト同盟の社会生活について、従来の市民《ブルジョア》文学でさえも、もし文学の本質が、ギリシア神話のプロメシウスの伝説を愛して、敢て試みる人間精神の積極性に敬意をはらうならば、最も興味ある注目をむけるはずである。だけれども、日本の文学の中には、僅かの見聞記があっただけで、小説として、一個の人間性の変革に作用してゆく関係において描かれた社会主義社会の描写はなかった。(こんにちではソヴェトからの帰還者のうちから、楽団を組織する人々があらわれ、捕虜生活という不自然な条件を通じてさえもなお社会主義社会のプラスを理解し、身につけて来た人々が日本の中にふえたが。)しかし、なお、帝国主義国家のソヴェト同盟の存在に対する誹謗と誇大な妄想めいたデマゴギーとが氾濫して
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