仰向けになるとすぐ、四五人の看守が来た。今度の看守長は、いつも典獄代理をする男だ。
――波田君、どうだね君、困るじゃないか。
――困るかい。君の方じゃ僕を殺してしまったって、何のこともないじゃないか。面倒くさかったらやっちまうんだね。
――そんなに君興奮しちゃ困るよ。
俺は物を言うのがもううるさくなった。
――その足を怪我してるんだから、医者を連れて来て、治療さしてくれよ。それもいやなら、それでもいいがね。
――どうしたんです。足は。
――御覧の通りです。血です。
――オイ、医務室へ行って医師にすぐ来てもらえ! そして薬箱をもってついて来い。
看守長は、お伴の看守に命令した。
――ああ、それから、面会の人が来てますからね。治療が済んだら出て下さい。
僕が黙ったので彼等は去った。
――今日は土曜じゃないか、それにどうして午後面会を許すんだろう。誰が来てるんだろう。二人だけは分ったが、演説をやったのは誰だったろう。それにしても、もう夕食になろうとするのに、何だって今日は面会を許すんだろう。
私は堪らなく待ち遠しくなった。
足は痛みを覚えた。
一舎の方でも盛んに
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