込まれてしまった。
「これで、当分は枕を高くして寝られる」と地主たちが安心しかけた処であった。
 枕を高くした本田富次郎氏は、樫の木の閂でいきなり脳天をガンとやられた。
 青年団や、消防組が、山を遠巻きにして、犯人を狩り出していた。が、青年団や消防組員は、殆んど小作人許りであった!
 勿論、当局が小作人組合に眼を光らさぬ筈がない。けれども、監獄に抛り込んである首謀者共が、深夜そうっと抜け出して来て、ブン殴っておいて、またこっそりと監房へ帰って、狸寝入りをしている、と云う考えは穿ちすぎていた。けれども、前々からそう云う計画が立てられてあっただろう、とは考えられない事でもなかった。
 従って、収監されていた首魁共は、裁判所へ引っ張り出された。その結果は、彼等は、「誰か痛快におっ初めたものだな!」と云う事を知った。彼等は志気を振い起した。
 残っていた連中も、虱つぶしに引っ張られた。本田家の邸内を護衛していた、小作人組合に入っていない、青年団の青年たちや、消防組員までも、一応は取調べを受けた。
 これは一つの暗示であった。
 地主共は、誰を信じてよいか?
 消防組、青年団は、何のために護衛し
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