まで此小僧は人を食ってやがるんだろう)
「ナアに、俺たちに一人ずつ跟いて来たんだよ。余り数が多いから一々顔が覚えてられねえんだよ。向うだって引継ぎの時にゃ、間誤つくだろうよ。ほら」
少年は通路に立っている乗客の方を、顎でしゃくって見せた。
「あれが、御連中だよ」
(だが、何だって此小僧奴は子供らしくねえんだろう。まるで四十になる俺と同年配ででもあるような、口の利き方をしやがる。それに云う事だって、理窟許り云ってやがる。顔付きにも似合わねえ野郎だ! だが、待てよ。「俺たちに一人ずつ附いてる、ってやがったな。然らば何だ! こいつ等は?――彼は、然らばと云う言葉を、刑務所で覚えたのであった。――然らばこの小僧は一体何だ?」一人連れていてその癖、網棚から首なんぞ吊るしやがって、横柄な顔をして大鼾で寝てやがる。何を為たんだ、何を。何者だ?)
「それで何かい。その、お前は一体何をやらかしたんだね?」
「何もやらかしゃしねえよ。これからやりに行く処なんだ。だが、お前さん、何だぜ、俺と話しをしてるとお前さんの迷惑になるかも知れねえぜ」
(此野郎。俺の言うことを先に言ってやがらあ。だが、どうだい、危ね
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