りしてやがらあ。はてな、俺のバスケットをどこへ持って行きやがったんだろう。おや、踏んづけてやがら、畜生! 叶わねえなあ、こんな手合にかかっちゃ。だが、この野郎白っぱくれて、網を張ってやがるんじゃねえかな。バスケットの中味を覗いたのたあ違うかい? 冗談じゃあねえぜ、余りやり方がしぶといや。薄っ気味が悪いや。何だい、馬鹿にしてやがら、未だ小僧っ子じゃないか。十七かな、八かな。可愛い顔をしてらあ、ホラ、口ん中に汗が流れ込まあ」
彼は、暫く凭れにかかって、少年を観察していた。
少年は疲れた顔を、帯の輪の間に突っ込んで、深い眠りに眠りこけていた。
「兄さん。おい、兄さん。冗談じゃないぜ息が詰っちまうぜ」
彼は、暫くして少年を揺り起した。少年は鈍く眼を開いた。そして両手をウーンと張り上げた。隣の人の耳を小突きながら、隣の人は小突かれると、反対の通路の方へガックリと首を傾けた。
「どうしたんだい。兄さん、首っ吊りするって訳じゃねえだろうな」
「うん」
少年は再び眼を瞑ろうとした。
「おい、兄さん。そりゃお前のバスケットかい?」
彼は少年の踏んでいるバスケットを顎でしゃくって見せた。
「じゃ
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